『夢のアパート302号室』──目が覚めても、夢は終わっていない

「また同じ部屋にいる……ここはどこ?」
夢は、人の脳がつくる幻想。
だが、ときに「夢の中でしか存在しないはずの世界」が、
現実を侵食することがある──。
これは、何度も「同じ夢」を見るようになった男性が体験した話。
🔹 何度も見る同じ夢
Tさん(24)は、ごく普通の大学生だった。
だが、ある日から「同じ夢」を繰り返し見るようになった。
夢の中の舞台は、古びたアパートの302号室。
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六畳一間、畳の部屋
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薄暗く、カーテンが一部破れている
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壁に張られたカレンダーは、1979年で止まっている
目が覚めると、布団の中で汗をかいている。
だが、その翌晩もまた──302号室にいる。
そして、夢の中でいつも誰かに見られている気配がある。
🔹 部屋に変化が現れる
3度目、4度目と夢を重ねるたびに、異変が起こり始めた。
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畳に黒い染みが現れ、日に日に大きくなっていく
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押し入れの戸が、少しずつ開いてきている
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見たことのない"古いランドセル"が部屋の隅に置かれている
そして、ついに6回目の夢で、押し入れの中から「声」が聞こえた。
── 「おかえりなさい、302号室のひと」
Tさんは、その声に恐怖しながら目を覚ました。
🔹 現実に侵食する夢
だが、それで終わりではなかった。
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現実の自分の部屋に、見覚えのないカレンダーが置かれていた(1979年)
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スマホに、知らない番号から『302号室に戻ってきて』という着信履歴が残っていた
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眠るたびに夢の時間が長くなり、現実がぼんやりしていく
「……このまま眠ったら、もう戻れないんじゃないか?」
彼は、睡眠を避けるようになった。
だが、限界は近かった。
🔹 最後の夢
10日目の夜。
Tさんは眠気に耐えきれず、眠ってしまった。
目を開けると──302号室。
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押し入れは全開
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黒い染みが畳全体を覆っている
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天井からは、ランドセルを背負った"子ども"が逆さに吊られている
そして、その子どもが口を開いた。
── 「きみも、ここに住む番だよ」
次の瞬間、Tさんは何者かに首を絞められ、息ができなくなった。
「目を覚ませ……!! 夢だ……夢だ!!!」
彼は絶叫しながら飛び起きた。
🔹 302号室の謎
彼は無事だった。
だが──
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机の上に、「302号室 鍵在中」と書かれた封筒が置かれていた
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その中には、本物のアパートの鍵と部屋番号が書かれた紙
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ググってみると、都内某所に実在するアパートがヒット
しかも、そのアパートは……40年前、火事で全焼した建物の跡地だった。
亡くなったのは、小学生の姉弟と、大学生の下宿人──302号室の住人。
🔹 夢と現実の境目
Tさんは今でも眠るのが怖いという。
眠ってしまえば、またあの部屋に戻ってしまうかもしれない。
そして今度こそ、本当に帰ってこられないかもしれない。
もし、あなたも毎晩同じ部屋の夢を見るようになったら……
それは、「302号室」へ招かれている合図かもしれない。
── 次にそこへ行くのは、あなたの番。